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無題



幼少の満とお珠のIF会話。
パロ前提の上、MOSO過多です


「――モレ。  ―――タモレ。」

初夏も過ぎ、肌に張り付き茹だる様な蒸し暑さと、耳障りな蝉の声の中、周囲とは全く異なるヒヤリとした耳鳴りの様なものが耳元を掠め、縁側で徐に怠惰な時間を過ごしていた少年はハッと顔を上げた。
まだ齢は10にもなっていないだろう。
――先程の異質な物は何だったのだろうか?
そう、見極めんが為に大きな紅色の瞳と頭部を忙しなく動かせば、夏の陽射しに当てられたやや薄い金糸がサラサラと動く。
幾程、視線をさ迷わせただろうか。見える範囲でその正体を見つけられずにいれば、やはり幼子。
夏の熱気にあてられたのも相まって一時の好奇心など直ぐに霞みとなって脳内から消え去り、縁側の手すりにふったりとした姿勢で体の体重を預けた。
こんな姿など、父親に見られれば組み手稽古と称した、勝ち目の無い一方的な”仕置き”をされるだろう。けれど、生憎と今日は花貴族の会合と、師範と共に家には居ない。
それはまだ小さく幼い彼にとってまたとない気の休まる時間であり、故に人目につく縁側で、立場上と節度を重んじる父親には決して見せれぬ醜態で怠惰な姿を気兼ね無く晒せれる好機。幻聴に気を取られて無駄にするにはあまりにも惜しい時間であった。
あぁ、けれど――

「―――来テタモレ  ワラワノ傍、来テタモレヤ」

耳をまた冷えた声が掠め、閉じかけていた瞼を開く。今度はハッキリと耳に――否、耳というよりは頭の中に静かに響いた。
誰が、誰に来いというのか。
いぶかしいと思った感情はそのままありありと彼の表情に浮き上がる。
その表情さえソレは”見えて”いたのだろうか。
クスクスとカンに障る含み笑いの音と共にまた冷ややかな声がリィンと脳に直接堕ちる。

「――満ヤ…――ワラワノ傍、来テタモレ?」

紅色の大きな瞳が更に大きく開かれた。あの声は今何と言ったか?幼子とて物心ついてからそれ相応以上の教育を受けていた彼は頭の回転は同年代よりは早い方だと自負してはいた。けれども、今のこの非現実的な体験とその非現実的な相手に自分の名を呼ばれた事に動揺を隠し、冷静に物事を図るにはまだ至らなかった。
動揺を隠せず困惑する彼を見てまたソレは隠さずに、むしろ彼自身にもあえて聞かす様にあからさまに冷たく、それでも”人”らしい笑い声を反響させる。

「ソノ様ニ、愛ラシュウ子兎ノ様ニ怯エズトモ、主ニ手ハ出サヌヨ。……ムシロ、ワラワノ声サエ聞コエルトモ思ウテオラナンダ次第デノォ」

「駄目元でもやってみる価値はあったわ」とクツクツとソレが愉快気に笑う間、やっと思考が戻ってきた満と呼ばれた幼子は、どうすべきか。どの選択が一番この場で相応しいかと冷静に脳が判断し始める。
夏の暑さからくる幻聴だとしても、ソレの声は妙に現実味があり、けれどもソレは矛盾する様に明らかに異質を感じさせていた。
満は霊や死後の世界等は信じていなかった。
人成らざるものであれば、この世界には”鬼”と呼ばれる種が存在するし、死んだら死んだ。それだけの事だろう。その後の事よりも、自分自身が今生きている世界以外に興味を持ち、この”生”を浅く見て否定するのは何よりも馬鹿らしく嫌悪さえする。
けれど、多分、今自分に話し掛けてきているコレはそういった物の化の類なんだろう。そう理屈や感情よりも満の本能はそう判断した。




【まったり書いてくよー】
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